「信頼されるサイエンス」と「人への深い理解」を両輪に日々の健康に寄りそう製品を届ける使命感
世界的なブランドポートフォリオを有するHaleonは、「Trusted Science(信頼されるサイエンス)」と「Deep Human Understanding (人への深い理解)」の2つの組み合わせによるアプローチを続けています。このためにHaleonでの重要な視点は何か、日本でのサイエンス分野に従事している2名にインタビューを行いました(注:データはすべて2024年2月現在)。
(左)メディカル・アフェアーズ シニアサイエンティスト 陶山 和明(スヤマ カズアキ)
(右)開発薬事担当者 中谷 遼太朗(ナカヤ リョウタロウ)
――「信頼されるサイエンス」について詳しく教えてください
中谷:「信頼されるサイエンス」を語る上で、重要なのは「人への深い理解」です。Haleonでは、この2つを両輪とし、どちらが欠けても成り立たないと考えています。最先端の科学技術を追求するだけでなく、生活者が何を求めているのか、何が足りないのか、人に寄りそうことを根底としています。生活者のニーズが基盤としてあり、その先にあるものが、最先端の科学と技術から成り立つ製品開発なのです。Haleonでは専門性が異なる、様々な分野のサイエンティストが世界各国に約1400名在籍しています。処方設計だけでなく、安全性、メディカルなど、世界各国のサイエンティストが連携しながら製品開発を行っています。
陶山:世界規模での研究開発が「信頼されるサイエンス」につながる大きな力となっています。私自身も世界各国のサイエンティストとのつながり、研究開発の力、データの豊富さなどグローバル展開による規模の大きさを日々実感しています。
――「信頼されるサイエンス」を推進するためのHaleonの体制は?
陶山:Haleonは、イギリス、アメリカ、中国の3か所に研究開発センターを設けており、日本の研究開発としては、常にグローバルと連携しながら、日本の生活者のニーズに沿ったエビデンスの創出に取り組んでいます。具体的には、日本での仮説をもとに海外の研究所で試験を行い、データ収集を行うことが可能です。例えば、義歯洗浄剤『ポリデント』はこのアプローチを採用しています。つまり、データを取得するためのスタディ(研究・試験・調査)の連携を、世界規模で展開する体制が整っているのがHaleonの強みです。ヘルスケアの世界では、臨床試験や使用実態調査、微生物または生体より分離した材料を用いて行うin vitro試験を主に行っていますが、「信頼されるサイエンス」を形づくるものとして、それらのスタディから導き出される豊富なデータと高いクオリティをHaleonは有しています。例えば、in vitro試験でいうと、効率的で迅速にデータが取得できる設備や人財、また、グローバルに臨床試験データやリアルワールドデータ(実際に製品を使用したデータ)を取得する体制も整っています。
Haleonのサイエンスには、確固たるポリシーがあります。臨床試験において、結果がポジティブでもネガティブでも公表することです。企業にとって、ネガティブなデータを公表することはマイナスになるかもしれません。しかし、Haleonでは、ネガティブなデータもサイエンス全体の貢献につながると考え、公表を続けています。企業としての利益のみを追求するのではなく、真にサイエンスの貢献を考えることが「信頼されるサイエンス」につながっていると考えています。
――Haleonの製品ブランドが高い信頼を得ている具体的な事例を教えてください
中谷:新たな成分を配合することと同時に、処方全体の有効性を担保することは、開発において非常に重要な課題です。有効成分をただ入れればよいという、単純なプロセスではありません。成分同士の化学反応によって、新たに加えた成分、あるいは他の成分の有効性が落ちてしまうこともありますし、ハミガキ剤として最適なpHや性状が保たれないといった様々な問題が予想されます。Haleon製品は長年の研究開発で培われた高度な技術や知見をベースにして、すべての成分の有効性が緻密にコントロールされています。
さらに、Haleon製品は安全性におけるグローバルの厳しい基準をクリアしなくてはなりません。この基準は医薬品レベルに設定されており、例えば、全ての原料は社内の毒性学の専門家により様々な観点からヒトへの使用の妥当性と安全性が評価される必要があります。この安全性に関する姿勢は、安心して使っていただける製品を開発するために最も大切なステップだと考えています。
そして、品質に対してもグローバル全体での揺るぎない姿勢で取り組んでいます。処方設計から製造プロセス開発において、QbD(クオリティ バイ デザイン)の考えが組み込まれています。また生産においては、体系的・統計的アセスメント手法で評価され、製造プロセスは常にアップデートされます。これらのプロセスにより、生産によるバラつきを最小限に抑え、高品質の製品を安定的に製造することが可能になります。
陶山:私たちは、有効性を科学的データで示すことに徹底的に注力しています。例えば、義歯安定剤『ポリグリップ』では、Haleonのサイエンスを駆使した独自の機器や手法を用いて、歯肉への垂直方向の圧力のデータ、あるいは義歯の横ずれのデータ等を取得しています。これらはHaleon独自の機器や手法を用いているため、非常に短時間で正確な結果を得ることができます。
また、『シュミテクト』のハブラシでは、専用の測定機器を使用して、しなり具合や歯垢除去の性能を数値化しています。1つの歯を数十のエリアに分けて歯垢除去率を測定することで、どの部位でどれだけ歯垢除去ができているかを数値で示すことができるのです。このような試験を丁寧に行うことで、ハブラシの機能を「3倍すき間に届く」、「1.5倍歯垢除去」、「2倍ブラッシング圧をコントロール」といった明確な数値で示すことを可能にしています。
――研究開発の一員としてやりがい、誇りを感じている点はどのようなところでしょう
陶山:やりがいであり、誇りとして感じていることは、「信頼されるサイエンス」を支えるスタディの強みです。例えば、義歯洗浄剤は多くの製品が市場にあり、生活者の方がどれを使ったらよいかわからないことがあります。そこで、ポリデントの良さをどう可視化していくかが重要なポイントになります。ポリデントは5分浸けるだけで、真菌もしっかり除菌できていることがデータとして示されています。こういった科学的な説明を可能とするスタディを行えることが誇りであり、それを生活者の皆様に伝えることがやりがいとなっています。
参考:ポリデントWebサイト
そして、生活者、製品ご使用者の皆さまの声を聴くことが、大きなやりがいにつながっています。ご使用いただいている皆さまの声を手紙や座談会などを通じて直接聴くことで、「よりよい製品をつくり、皆さまに伝えていこう」というモチベーションがさらに高まります。
中谷:科学的に有効であることが示されていても、実際に使ってみて効果を感じたかどうか、ここが大変気になるところです。ご使用いただいているお客様から「カムテクトは、味が大好きで、一度使ったらやめられません」といった感想を伺うと大きなやりがいにつながります。 お客様の声を聴き、実感とサイエンスが結びついたとき、やりがいを感じると共にHaleonにおけるサイエンスの力を誇りに思います。
――日本におけるサイエンス、製品の研究開発での挑戦なども教えてください
中谷:日本には、欧米や他のアジア諸国と異なる特徴的な薬事規制があります。したがって、グローバルカンパニーとして、他国で展開している製品の処方をそのまま日本で展開するのは難しいケースも多々あります。そこで、日本に合わせた処方設計の見直しや、日本人に合ったフレーバーを開発するなど研究開発の役割は多岐にわたります。
陶山:日本独自のローカルニーズを丁寧に海外に伝えていくことは、「信頼されるサイエンス」の両輪として存在する「人への深い理解」につながることだと考えています。
中谷:近年では、グローバルとの双方向による研究開発がより活発になっています。『シュミテクト プラチナプロテクトEX』もその1つで、日本発信で開発されたものです。日本の生活者のニーズを海外にも丁寧に伝え、ディスカッションを重ねることで日本発の製品が誕生しました。『シュミテクト プラチナプロテクトEX』は従来の有効成分、硝酸カリウムに加え乳酸アルミニウムを配合したWブロック処方の知覚過敏用のハミガキ剤です。歯がしみるといった刺激は、歯の象牙細管という神経につながる無数の穴から伝わります。この象牙細管の穴を塞ぐ役割を果たすのが乳酸アルミニウムです。海外の研究所や高等学術機関とディスカッションを重ね、重要なデータを取得できたことが挑戦であり、苦労した点ともいえます。Wブロック処方として、乳酸アルミニウムを入れただけでは終わりになりません。有効性と安全性をどうやってバランスをとっていくかが、 サイエンティストの醍醐味です。生活者の皆さまからの声を聴くことを目指して挑戦を続けました。
陶山:2023年に発売された『カムテクト プレミアム』は、歯ぐきの血行を促進するビタミンEを配合していますが、これは実は悲願の製品なのです。以前から、ビタミンEを配合することで、主成分の安定性を維持できなくなることが分かっていました。なぜ安定性が悪くなるのか、緻密な研究を続けることで、やっとビタミンE配合で主成分を安定させる処方をつきとめたのです。これは大きな挑戦でした。『カムテクト』は海外でも別の名前で展開されています。つまり、海外の研究所が所有するクリニカルデータを日本の製品開発にも活用しています。これはHaleonのグローバル全体での「信頼されるサイエンス」を支える大きな力となっています。
――今後の日本の生活者に向けた製品開発に対する研究者としての想いをお聞かせください
中谷:ハミガキ剤の研究開発担当として、知覚過敏で悩んでいても改善する方法がわからないという悩みを抱えた方の一人でも多くの力になりたいと想っています。実は知覚過敏は、20~40代の若い方に多い症状です*。今回、日本の若者が注目するナイトケアに着目した製品『シュミテクト プラチナプロテクトEX 集中ナイトケア』も開発しました。知覚過敏や歯周病予防の啓発と共に、毎日使う製品を安心してご使用いただきたいですし、日本の生活者の悩みに寄りそえるような製品開発により力を注ぎたいと考えています。
* 参考:厚生労働省 「令和4年歯科疾患実態調査」
陶山:科学だけを追求していくと、置き去りにされてしまうのが「人への理解」です。様々な方と関わることで、いかに生活者のニーズに向かい合うことが大切であるかを実感してきました。皆さまがより健康になるために、私たちが力を発揮すべき点は、アンメットニーズ(まだ満たされていない需要)に応えていくことだと考えています。コンシューマーヘルスケアにおける世界的なリーディングカンパニーとして培ってきたすべてが、日本の生活者向けの製品開発における大きな原動力になると信じています。